号泣する準備はできていた 江國香織

あとがきに適切な一文があったので、引用させていただきます。本人が書いてるんだから当たり前じゃん、と感じるかもしれないけれど、意外と「適切に感じられない」あとがきも多いのです。

短編集、といっても様々なお菓子の詰め合わされた箱のようなものではなく、ひと袋のドロップという感じです。色や味は違っていても、成分はおなじで、大きさもまるさもだいたいおなじ、という風なつもりです。


ほんと、こんな感じです。その、既視感にも似た“均一さのかたまり”を、口の中いっぱいほおばっていると、なんだか前頭葉を中心として、やわらかい痺れが生じてくる。やわらかくて心地良くて物憂げな、不思議な痺れ。文章ってなあ麻薬だよなあと、つくづく思う。


それにしても、amazonさんでレビューされてるみなさまの、評価の低さには驚いた。そんなにひどい作品ではないと思うのですけどね(個人的には好きです)。あと、amazonさんのレビューの中に、江國さんは「幸福がかけない作家だ」というご意見があって、なるほどと思った。幸福がかけないというか、かくのが下手くそだと思う。綺麗な文章なのに、そこだけ不器用になってたりする。でも、そこがまた好きだったりするのですが。


号泣する準備はできていた (新潮文庫)

号泣する準備はできていた (新潮文庫)