私の頭の中の黒板

長くなってしまったので、閉じておきますね。




実は、頭の中には黒板がある。色とりどりのチョークと黒板消しを兼ね備えた、黒板が。


その黒板に、様々な人や天気やニュースや製品や生物が、思いのままに様々なことを書き連ねていくのだ。ある人は「あんた嫌な感じ」と書いたり、またある人は「よろしくー」と書いたり。天気は「どんよりどよどよ」と書き、“人身事故が起きた”というニュースは「あんたも飛び込んでみれば」と書き、靴底が擦り減った通勤靴は「早く買い替えろよ」と書き、道端の茶毛の野良猫は「なんだなんだ」と書くかもしれない。


天気やニュースや製品なんかは、よくできたもので、ちゃあんと備え付けのチョークで書き込んでくれる。しかもたいていの場合、薄く優しく。なので、それを消すことはそんなに難しいことではない。黒板消しで「さっ」とやれば消える(勿論例外もあるが)。だから、天気が悪くても暗いニュースがあっても何か製品が壊れても、案じることはない。黒板消しで消せるんだから。


問題は、人。まず彼らは、備え付けのチョークをあまり使ってくれない。すぐに自分のチョークで書いてしまう。黒板とチョークにも相性ってのがあるもので、相性の悪いチョークで書かれてしまうと、なかなかうまく消えてくれない。消えても、痕に残ってしまう時がある。相性が悪くなくても、力強く書かれすぎて痕に残ってしまうこともある。そういうのはなんだか妙に引っかかるし、あんまり気持ちのよいものではない。


また困ったことに、チョークではなく油性マジックで書き込んだりする不届き者も、いる。油性マジックは黒板消しでは消えないので、どうするかってえと、それを消すための特殊な液体を使うのだ。その液体を該当箇所に塗りたくれば、大抵の場合、キレイに消えてくれる。とても便利な液体だけれど、一つ難点があって、それは黒板にかなりの負荷がかかってしまうこと。続けて使っていると、黒板がすっかり傷んでしまう。だから、なるべくなら使わないでいたいのだけれど、油性マジックで書かれたのを残しておくのも嫌な感じだし(しかも多くの場合、油性マジックで書かれる言葉は自分にとって不快なことだ)、使うしかない。


(その液体、ある人は“酒”のかたちに見えたり、ある人は“異性”のかたちに見えたり、ある人は“ギャンブル”のかたちに見えたり、またある人は“食べ物”のかたちに見えたりするそうですね。みなさまはどんなかたちに見えているのだろうか)



・・・しかし、あれなんですよね、「油性マジック」がデフォルトの人ってのも、ごくごくたまにだけどいたりして、そういう時は本当に困ってしまいますよね。「この人は油性マジックだから」と諦めて、逃げるしかないもの。