空を飛んだペンギン


毎日まいにち、「空を飛べますように」と祈り続けたキングペンギンがおりまして。食べるモノもろくに食べず、睡眠すら満足にとらずに、一日の大半を祈り続ける事に費やしていた。空を飛べますように、飛べますように、と。


ある日、いつものように祈り続けていると、キングペンギンは自分の体がフワっと軽くなったような、不思議な違和感を受けた。おやっと思っていたのもつかの間、キングペンギンの体はあっとゆう間に大空へ舞い上がっていった。最初は何が何やらさっぱり理解できず、あたふたとしていたキングペンギンだったけれど、時間を置いて冷静になってみると、なんと自分が空に浮かんでいるではないか。試しに「左に行こう」と思って体をすっと左に傾けると、ゆっくりと自分の体が左旋回をはじめた。おおおっと思って、今度は右旋回、また今度は上昇そして下降と、徐々に「空を飛べる状況」を把握していくキングペンギン。数十分もすると、すっかり自分が空を飛べる事を自覚し、体が震えて涙が自然と溢れてくるほど喜んだ。満面の笑みで涙しながら、大空を縦横無尽に駆け巡った。


その時だった。


ゴンとゆう鈍い金属音が大空に響いた。力なく急降下していくキングペンギン。


大型のジャンボジェット機と正面衝突してしまったのだ。空を飛ぶ事を、一途に夢見続けたキングペンギン。満面の笑顔のまま、幸せの涙の痕を残したまま、ぐったりと堕ちてゆくキングペンギン。もうこの世界で飛ぶ事はできないかもしれないけれど、きっとまた別の世界で飛び回っていることだろう、もう既に。そう思って、まだ見ぬ世界でのキングペンギンの、はしゃぎっぷりを、そっと心に留め刻みつけてみた。


・・・とりとめのない文章ですみませんが、人身事故に遭遇したもので。私には祈る事くらいしかできないけれど、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。こんな無宗教人の拙い祈りでも、どこか先っぽにでも届けばいいなあと思う。