向日葵の話をしましょうか

ある一軒屋の裏庭に植えられた、一本の小さな向日葵の話。


「とりあえず植えとくか」という軽いノリで植えられた向日葵。最初のころは「ちっちゃくて可愛い」と言われ、水や肥料も与えられたけれど、一週間もしたらすっかり忘れられて、それからはずっと放置され続けていた。


向日葵は、誰にも頼らず自分一人で生きていくために、根をより深く長く張り、土から水分と栄養をより多く吸収するよう努めた。日差しの少ない裏庭で、日光を効率良く摂り込むために、たくましく葉を繁らせた。そうして、誰からも忘れ去られた向日葵は、独りですくすくと成長していった。


そんなある日、隣の家に住む少女がこの向日葵を見つけた。一目で向日葵を気に入った彼女は、向日葵の家の人には内緒で、日当たりの良い場所に向日葵を植え替えた。そして、毎日欠かさず水と肥料をあげた。そうしたら向日葵は、だんだんと元気がなくなってしおれていき、二週間と経たず、すっかり枯れてしまった。強い日差しにより花と葉はカラカラに萎れ、水のやりすぎで根ぐされもしていた。


今までずっと、湿った裏庭で生きてきた向日葵にとって、さんさんと照り輝く太陽は眩しすぎた。全て自分で水分と栄養をまかなってきた向日葵にとって、彼女が与えた水と肥料は、ただの蛇足でしかなかった。その向日葵にとっては、「湿った裏庭で自分一人で生きていくこと」が、生きる上でベストの条件だった。


全ての向日葵が、さわやかな青空の下で可愛がられ、みんなで華やかに生きているわけではないのだ。