嫌われ松子の一生(映画)

こっそり告白してしまうと、私は中谷美紀さんのファンです。ケイゾクからのファンなので、古くからのファンの方からすると「ひよっこ」と言われてしまうかもしれませんね。ケイゾクもそうなのだけれど、最も好きなドラマの一つである“永遠の仔”での彼女の名演を見て、完全にファンになった(書籍も写真集も音源も持っていないので、ファンと言えるかどうか怪しいかもしれないけれど)。


前置きが少し長くなってしまったけれど、この映画、山田宗樹さんの小説の映画化との事。中谷美紀さん演じる川尻松子の転落人生を、ミュージカル形式をふまえて、暗くなりすぎないようコミカルに描いている。監督さんの「暗くなりすぎないように」という姿勢が非常に分かりやすく、好感が持てた。普通に松子の人生を辿っていったら、おそらく、ただ暗いだけの救いのない話になってしまうのではないだろうか(評判を聞くと、どうもドラマ版がこの傾向みたいですね)。


主演の中谷美紀さんをはじめとする出演者の方々にも、その「暗く落ち込んだ話にしてしまわぬように」という方針が垣間見られた。AV女優社長を演じる黒沢あすかさん、最初から最後まで松子と深く関わることになる、龍洋一こと伊勢谷友介さん、そして、チョイ役での出演の木村カエラさんや(ガレッジセールの)ゴリさんなどなど、勢いとパワーに溢れ見ていて心地良かった。勿論一番心地良かったのは、中谷美紀さんの痛快な演技なのだけれど。


ひたすらに重い設定にもかかわらず、サクサクと見ることができるリズムの良さ、途中で挿入されている楽曲のクオリティの高さ、そして何より、青年期〜老年期の川尻松子を見事に演じきっている中谷美紀さんの渾身の演技。総合的に見れば大満足の映画なはずなのだけれど、最後の演出でどうにも後味が悪くなってしまった。ネタバレになってしまうので多くは言えないけれど、松子をああいった形で祭り上げるのは、どうにも納得がいかない。回想部分もひたすら蛇足。メインディッシュまでは素晴らしい一品が続いたのに、最後のデザートで思いっきり外されてしまったような、残念な気分になった。


・・・批判的なことも書いてしまったけれど、非常に興味深い作品であったことは間違いない。まだ観ていないかたは、お時間が許すのであれば、是非どうぞ。


嫌われ松子の一生 通常版 [DVD]

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追記

自分が自殺できないことと、人生は死ぬまで終わらないこと。まだまだ短い人生だけれど、これらだけはもう確信した。松子は言う、「人生が終わったと思いました」。しかし、生きている限り、人生は続く。やるしかないのだ。