森の記憶

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私の森の記憶。


おびただしいほどのクマゼミの叫びと、おびただしいほどのウシガエルの歌声。

天の彼方の、そのまた向こうにさえ届きそうな、親しげな蛍の光

むっとたちこめる、木々と野草の暴力的なにおい。

絶望的なほどのまっくらやみと、あたたかい土のかおり。

優しげな沢のせせらぎと、沢蟹を小さい足で踏みつぶした、いやな感覚。

そして

逃げ場も居場所も、どこにもないのだという、圧倒的な諦念。

森に囲まれ、いきものたちの不揃いなオーケストラに包まれ、

それでも、自分をすっぽりと覆い隠すことはできなかった。


逃げることも、消えることも、できないんだと、思った。


そんな、記憶。