電車の中に死体があるのかなと

思った。


目は半開きで、瞬きすらせず、微動だにせずに座席のカドっこに頭を凭れかけて座っている男性(20代前半くらい)がおりまして。ぱっと見「まずい、このひと死んでるかもしんない」と思って、でもそんなわけないよなあと思いつつ、5分くらいじいっと見つめていたのだけれど、やっぱり微動だにせず、瞬きすらしない。「どうしよう死んでたらどうしよう」と思って、ドキドキしながらこっそり周りを見渡してみたのだけれど、誰も気にしている様子がない。


「みんな気づいてないのかな、でもどうしようこのひと70%くらいの確率で死んでる気がするし、ちょっと頭をポンポンって叩いてみようかな」とか思いながら、ますます心臓をバクバクさせてじいっと凝視していたその時、右手の親指がほんの微かにピクッと動いたような気がした。「おっ」と思って、でも気のせいかもしれないと自分を戒めさらに凝視していたら、ゆっくりと親指が立った。「おおおっ」と思っていると、すぐにパタンと元に戻ってしまい、また微動だにせず、瞬きすらしない状態になってしまった。


そうこうしているうちに(まあ、どうもこうもしていないのだけれど)自分の降りる駅になってしまったので、曙太郎に後ろ髪を引かれるような思いで電車を降りた。あのお兄さん死体でなければいいなあと、切に願っております。